高齢者のめまいと手足のしびれ、舌のもつれなどから考えられる病気
高齢者でめまいと手足のしびれ、舌のもつれなどが同時に起こる場合
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高齢者でめまいと同時に手足のしびれや舌のもつれなどが見られるときは、以下のような脳血管障害が疑われます。
■ ラクナ梗塞 (-こうそく) 【自覚症状】 めまい、手足のしびれ、舌のもつれなど。
ラクナ梗塞は、脳梗塞の一種です。脳梗塞は半身不随になる病気というイメージが強いと思いますが、それはアテローム血栓性脳梗塞の場合です。アテローム血栓性脳梗塞は、脂肪、カルシウム、マクロファージ(細菌や死んだ細胞を捕食する食細胞)の死骸などが動脈内に付着してアテロームと呼ばれる固まりが形成され、それが剥離して脳の動脈を詰まらせ、脳内の比較的広範囲の血流を阻害したときに発症します。その症状は突発的に起こり、気を失ったり体が麻痺したりするなど重いものになります。しかし、ラクナ梗塞は、脳の動脈から枝分かれした細い血管にアテロームの小さな破片や血栓(血小板の固まり)が詰まって発症します。梗塞の範囲が狭く(おおむね幅1.5cm以下)、その症状は梗塞の起こった脳の部位によって異なりますが、多くは上記のような比較的に軽いものになり、場合によっては自覚症状がまったくないことも珍しくありません。
ラクナ梗塞は、日本人にもっとも多い脳梗塞のタイプです。高齢者では、アテロームの蓄積によって動脈硬化が進行し、血管壁がもろくなると同時に高血圧が進行して血管の損傷とそれによる血栓が出来やすくなるため、ラクナ梗塞を発症しやすくなります。上記の自覚症状が見られたときは、脳神経外科、脳神経内科などを受診してください。また、ラクナ梗塞に限らず、脳梗塞の診断にはCT(X線断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴診断装置)による検査が有効ですので、設備の整った総合病院が適しています。
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■ 小脳出血 【自覚症状】 突然のめまい、頭痛、吐き気・嘔吐、舌のもつれ、歩行困難など。
小脳出血は、脳内出血(通称・脳出血、脳溢血)の一種です。小脳は、後頭部の大脳の下、大脳と脊髄をつなぐ脳幹の後ろに位置し、大脳・脳幹とともに脳を構成しています。その主な機能は、視覚、平衡感覚、皮膚・筋肉・腱・関節などの体性感覚に基づいて体の平衡維持や筋肉の緊張、随意筋の運動などをつかさどります。また、動作時の手足の動きや発声、飲食の時の口・舌・のどの動きなど、日常的に行っているあらゆる動作を無意識かつスムーズに行えるよう、関係する筋肉の動きを自動的にコントロールしています。そのため、小脳出血が起こると、それらの機能が働かなくなり、回転性のめまい(ぐるぐると目が回る感覚)とそれによる吐き気を感じたり、まっすぐに歩けないなどの各種運動障害が現れます。
小脳出血の原因は、全年齢で見ると高血圧が約70パーセントを占めています。高齢者における典型的な発症のメカニズムは、まず動脈硬化と高血圧の進行によって脳内の細い血管に壊死が発生。壊死した血管に血液が溜まって小さくこぶ状に膨らむ小動脈瘤となり、それがやがて破裂して小脳出血となります。小脳出血の発症部位には血腫(こぶ状の血液だまり)ができますが、血腫がある程度小さく、出血が進行しない場合には、手術を行わずに投薬療法で治療できます。しかし、血腫の増大が進行する場合には、頭蓋内圧の上昇だけでなく、血腫によって脳幹の呼吸中枢が圧迫されることで呼吸が停止する危険性もあるため、手術が必要になることもあります。小脳出血が疑われるときは、直ちに脳神経外科、脳神経内科などの専門診療科がある病院を受診してください。
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