高齢者の脈拍数が低下する病気




高齢者の脈拍数が低下する病気

手首で測る1分間の安静時脈拍数は、男性で60〜70、女性で65〜75が標準的な正常値とされています。一般的に60未満の場合を徐脈と呼び、不整脈(規則正しくない脈拍)の一種とされています。ここでは、徐脈を代表的な自覚症状とする高齢者の病気を紹介します。

■甲状腺機能低下症

【自覚症状】 徐脈(脈拍数が少ない)、脱力感・倦怠感・眠気、乾燥肌、脱毛、記憶力・計算力の低下、聴力の低下、かすれ声など。さらに進行すると、顔のむくみ・瞼の腫れも。

甲状腺機能低下症は、白血球の一種であるリンパ球による自己免疫疾患です。甲状腺の組織がリンパ球によって障害を受け、甲状腺ホルモンの分泌量が減少します。甲状腺ホルモンは、全身の細胞に作用して新陳代謝を促進させる機能があり、それが減少すると細胞の代謝は緩慢となり、臓器の働きも緩慢になります。脈拍が遅くなるのも、そのためです。また、心臓以外の器官の代謝速度も遅くなり、さらに酸素や栄養を運ぶ血液の還流量が減少することも影響して、上記のようなさまざまな症状が現れてくるものと思われます。

ただし、甲状腺機能低下症の病状の変化は、大変緩慢です。自己免疫による甲状腺の炎症はゆっくりと進行し、甲状腺全体に広がるまでに何年もかかります。その間、炎症を起こした組織のホルモン分泌の機能を健全な組織が補完するため、症状の現れ方は緩慢です。しかも、症状の多くは他の疾患でも高齢者によく見られるものであり、また、単なる老化現象と勘違いして、発病に気づかないことが多いようです。しかし、放置しておくと、重度の貧血や危険な低体温症心不全を引き起こす危険な病気です。

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(C) 2017 よくある高齢者の病気(症状別)