高齢者のうつ病
近親者や親しい友人を亡くしたとき、多くの人は悲嘆に暮れて、何もする気がしなくなってしまうことでしょう。かけがえのない人を失った悲しみという強い精神的ストレスにさらされて、うつ状態に陥るのです。しかし、それは自然に起こる一時的な精神状態(悲嘆反応)であり、それが直ちにうつ病に移行するとは限りません。
うつ病は、通常、悲しみ・不安・恐怖などの強い精神的ストレスを長い間受け続け、慢性的なうつ状態が長く続くことによって発症します。脳の中心部にあって感情や記憶をつかさどる扁桃体という組織とその周辺組織の神経細胞が、長期間の強いストレスによって萎縮し、機能を十分に果たせなくなることがうつ病の一つの主要な原因であることは、最新研究によってすでに判明しています。
その強い精神的ストレスを生み出す要因としては、高齢者の場合、以下のようなものが挙げられます。
●家族・友人の死亡や病気
●家族・友人とのいさかい
●身体的な病気・障害
●子供との同居や施設への入所
●経済的な問題・困窮
●失職による社会的役割の低下
●社会的な孤立
●身体的な感覚の鈍化
●認知機能・行動力の低下 など
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