高齢者の胃もたれ(胃がもたれる)から考えられる病気 -2




■ 胃・十二指腸潰瘍   【自覚症状】 胃痛、胃もたれ。胸焼け(胸の下から上に向かって熱くなる感覚)、吐き気、嘔吐をともなうことも。進行すると黒色の吐血や黒色便も。

胃・十二指腸潰瘍は、胃潰瘍十二指腸潰瘍を合わせた呼称です。どちらも慢性胃炎と同様にピロリ菌による粘膜の傷害が主な原因であり、胃潰瘍は約70%、十二指腸潰瘍では95%がピロリ菌によると言われています。慢性胃炎と症状が似ていますが、慢性胃炎が主に粘膜のもっとも外側にある上皮細胞の傷害であるのに対し、胃・十二指腸潰瘍は粘膜と筋肉層の間にある粘膜下層にまで傷害が及びます。また、潰瘍部分が拡大すると出血量が増え、吐血や黒色便の症状が見られます。

胃・十二指腸潰瘍を放置して進行すると、患部に穴が開く潰瘍穿孔が起き、それによって腹膜炎を発症する場合もあります。また、胃潰瘍を放置することや繰り返すことで、胃癌のリスクが高まります。通常の診療科は消化器内科が最適ですが、激しい腹痛や吐血・下血がある場合は緊急処置が必要ですから、救急外来を利用してください。


■ 胃癌   【自覚症状】 早期のときは特になし。進行すると、胃痛、腹部膨満感、食欲不振など。

胃癌は、胃粘膜に発生する癌です。胃癌の発生にもピロリ菌が関与していますが、ピロリ菌の感染だけで健康な胃粘膜に癌が発生するわけではありません。まずピロリ菌によって胃炎を発症し、それが慢性胃炎となって患部の胃粘膜が萎縮した後、飲酒・喫煙や高塩分、魚・肉の焦げなどを含む食事によってもたらされる発癌性物質の影響が加わり、萎縮した胃粘膜に癌が発生すると考えられています。

現在までに公表されている癌治療の全国調査結果によれば、胃癌の死亡率は肺癌に次いで第二位となっています。癌が胃粘膜にとどまっている早期の胃癌では、自覚症状がまったくありません。そのため、以前はある程度進行して上記のような自覚症状が現れてから病院を受診し、初めて癌と診断されることが多く、発見の遅れが高い死亡率につながっていました。しかし、現在では胃部内視鏡による癌検診と粘膜剥離手術の技術が進歩し、高齢者に対しても胃部内視鏡検査が普及したため、早期発見によって内視鏡手術だけで完治する症例が増加しています。胃癌の発生には遺伝的因子や生活環境も関与していると考えられますので、特に身内に癌の病歴を持つ人がいる高齢者は、1〜2年に1回は胃部内視鏡検査を受けておくと安心です。癌検診の専門機関のほか、内科外科消化器内科を受診してください。

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(C) 2017 よくある高齢者の病気(症状別)