●認知症による錯誤や恐怖心
高齢者でも健康な人は、入浴習慣を変えることは少ないと思われます。それでも、老化による体力の衰えや体の不調で入浴が大きな負担となったり、血圧が気になったりして、入浴回数が減るかもしれません。また、高齢者に多い病気の中でも認知症を患った場合は、その影響が深刻であり、介護に当たる人が入浴させようと思っても断固として拒否するケースが珍しくないようです。
認知症患者が入浴を拒否するのには、大きく分けて2種類の理由があると思われます。ひとつは、認知症患者に限ったことではありませんが、介護に当たる人の存在を意識するためであり、さらに言えば、年老いた肉体や下着を人目にさらしたくないという羞恥心や自尊心があるからです。もうひとつは、病状が進行した患者の場合ですが、入浴をすでに済ませたという勘違いや、入浴という行為自体が理解できないなどの症状によるものです。また、浴室での転倒や浴槽で溺れそうになった経験のある患者は、恐怖心で入浴できないとも言われます。入浴を拒否する認知症患者に対しては、その心理状態や治療・介護記録を理解して対処することが大切です。