浮動性めまい(非回転性めまい)とは、体がふらつき、よろめくようなめまいのことです。回転性めまいほど強いものではなく、目が回るような感覚もありません。そこで、医師の間ではその状態を「めまい感」あるいは「ふらつき感」といった言葉で表現されます。しかし、継続性が強く、断続的あるいは頻繁に起こることも珍しくないため、「慢性めまい感」などと呼ばれています。高齢者においては、この慢性めまい感を感じる人が多く、その原因となる病気としては次のようなものが考えられます。
■頚椎症(けいついしょう) 【自覚症状】肩凝り、首の凝り、手のしびれ、歩行障害など。
高齢者の頚椎症は、通常、加齢によって頚椎の椎間板(ついかんばん)などが磨耗変形し、その関節部分に炎症を起こす病気です。病院で慢性めまい感を訴える高齢者の大半が肩・首の凝りや痛みを抱えており、その多くに頚椎症が認められます。そのような患者に頚部筋マッサージなどの理学療法を施すと、肩凝りなどとともにめまい感も一時的に改善しますが、翌日以降にまた発症します。慢性めまい感と肩・首の凝りとは密接な関係があり、頚椎症がその根本原因になっている可能性があります。
■不眠症 【自覚症状】不眠(入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害)。
上記の症状のいずれかが1ヶ月以上に渡って続く場合に、不眠症と診断されます。その原因としては、ストレス、生活のリズムの乱れ、生活環境などがまず挙げられますが、その他、うつ病などの精神疾患も有力候補として考えられます。慢性めまい感を訴える高齢者の症例では、睡眠薬または抗うつ剤の投与で熟睡することができ、同時にめまい感も解消されるケースが少なくありません。高齢者の慢性めまい感と睡眠障害・うつ状態との間にも密接な関係があるようです。